ボルドーは年間降水量が比較的多く、乾燥した風通しのよい産地に比べると、自然派のワインを造るにはあまり向いている産地とは言えません。しかしながら、ここ10年足らずでボルドーは急速な変化をしています。メドック格付け5級のシャトー・ポンテカネを筆頭に、シャトー・クリマンやギロー、デュルフォール・ヴィヴァンなど、名立たるシャトーがビオディナミの導入やビオロジックへの転換を推進。あのメドック格付け1級のシャトー・ラトゥールに関しては、グランヴァンを生むランクロの畑はビオディナミに、その他の所有畑も100％オーガニックに転換しています。左岸だけでなく右岸側も大きな動きがあります。衝撃的であったのはサンテミリオン。2019年以降、サンテミリオンとサンテミリオン衛星地区では、サステイナブル農法、オーガニック農法、ビオディナミ農法のいずれかの認定もしくは取得途中でないとAOCサンテミリオンを名乗れないという厳しい規定を新たに設けました。今、ボルドーは確実に次の時代に移行していっています。いままでの名声に胡坐をかくことを止め、自然環境を守りながら、より品質の高いワインを生み出す「新たな産地」へと生まれ変わろうとしている、そんな強い意志を感じます。

今回は、まさに今ボルドーが目指す先が表現されていると言っても過言ではない3本のワインをセットにしました。ボルドー全体がオーガニック農法へ向かうずっと以前より自然な農法で畑を守り続けている素晴らしい2生産者のワインと、近年のボルドーの新たな動きでもあるサスティナブルな小規模ワイナリーの１生産者のワインの合計3本。ボルドーらしい力強さを持ち併せながらも、滋味深い旨みを楽しむことができるワインセットです。

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Chateau Le Puy－シャトー・ル・ピュイ－

シャトー・ル・ピュイの畑は自然の中にあります。所有する区画のほとんどには森や池が広がり、昆虫、微生物など多くの生き物が生息しています。その生態系が保たれた大自然の中で400年農薬が使用されていないブドウ畑、それがル・ピュイの畑なのです。ワイン造りも人為的な介入を極力抑え、ブドウ畑で生み出されたエネルギーを最大限に表現。補糖、人口酵母の添加、濾過・清 澄は一切行わず、酸化防止剤も無添加もしくは最小限の使用と徹底しています。

このワインについて

シャトー・ル・ピュイの樹齢の若い葡萄を使用したル・ピュイのセカンドワイン。フレッシュな果実味と上質なボルドーを思わせるハーブ香、緻密なタンニン、ビロードのような口あたり。質感は柔らかいのですが、ブドウの生命力が感じられる力強さがあります。

Chateau Beausejour－シャトー・ボーセジュール－

サンテミリオンの北、ピュイスガン地区のトップ生産者。医師でもあった祖父の代から農薬や科学肥料を使わず自然な農法でワインを造っていたシャトー・ボーセジュール。現当主ジェラール・デュピュイ氏も代々の理念を引継ぎ自然環境を守ったワイン造りを行っています。

このワインについて

亜硫酸無添加の意味を持つこの「サンシュルフィテ」はシャトー・ボーセジュールでも特別なキュヴェ。ブドウが完璧で且つ、野生酵母の働きも完璧であれば、亜硫酸ゼロでも偉大なワインが造れるという信念を表わしたワインです。よく熟した黒ブドウ系の果実味と、ほどよいハーブのニュアンスが見事に重なり合い、品の良い味わいに仕上がっています。

Domaine de L'ile Rouge－ドメーヌ・ド・リル・ルージュ－

ドメーヌ・ド・リル・ルージュは、パリ生まれのアントナン・ジャモワ氏が、一代で立ち上げたマイクロワイナリー。科学と農業経済学を学んだ後、アルゼンチンでワイン造りの経験を積んだ他、海老の養殖業や、マダガスカル共和国のクンバ島でスピアフィッシングガイドをするなど、珍しい経歴を持っています。2014年、ボルドーに0.8haの畑を購入し、ワイン造りをスタート。オーガニック認定（Agriculture Biologique）を取得しており、自然な醗酵を実施しています。亜硫酸は必要な時にのみ極少量を添加するのみ。設立当初より、製造する全てのワインにおいてヴァン・メトド・ナチュールの認証を取得しています。

このワインについて

メルローの古木と、カステというボルドーの固有品種を栽培。蒸かしサツマイモのような優しい甘やかな香りが印象的なワインです。カシスなどの凝縮感のある果実味と滑らかなタンニン。力強くも飲み疲れしない1本です。